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社員の退職金は法律で決められていて、基本的には給与に対して勤続年数で計算することが一般的ですが、役員退職金は法律上で明確に決められていないことから、どのように決めたらいいのかとわからない方も多いのではないでしょうか。 

特に役員退職金を活用して節税したいケースは、多額の役員退職金を設定すると税務署に認められないケースもあるため、いくらに設定したらいいのかと悩まれている方もいらっしゃるでしょう。 

そこでこちらの記事では、役員退職金の決め方、役員退職金をもらった時にかかる税金、役員退職金を準備方法などについてまとめました。 

1、役員退職金はいくらなら妥当?「功績倍率法」とは?

役員退職金とは、長年経営に従事した功労に対して任意で支払われる報酬であり、支給される額について法律で明確に定められていません。

ここでは、税務署が最もスタンダードに使われている「功績倍率法」をご紹介します。下記の計算式にて算出することができます。

役員退職金=最終役員報酬月額(1)×役員在任年数(2)×功績倍率(3)

ここで支給額を決定する3つの数字をそれぞれについてみてみましょう。

(1)最終役員報酬月額

最終役員報酬月額は言葉の通りに役員が退職する直前の役員報酬(月額)のことです。

一般的には役員報酬は年度の初めに決められて、途中での金額変更はできません。従って、退職金の金額を高くすることを目的に、最終の月の報酬だけを高く支払うことは認められません。

そのため、退職を予定している年にその年間の月額報酬を高く設定する必要があります。例えば、今までの役員報酬の月額が100万円だったのだが、前年度の会社の業績が良かったから150万円に設定することは可能です。

また、これまで順調だった業績が退職直前に悪化し、100万円だった役員報酬が減額して50万になってしまった場合や極端な話ゼロになった場合、判例によるとこれらの数字は最終役員報酬月額として採用されません。なぜならば、最終役員報酬は過去最高水準のものを前提に考えられているからです。

そのためこのケースでは過去のケースを考慮され、最も適正である月額が採用されます。例えば、今回の新型コロナウイルスの影響を受け、業績が悪くなった会社も多くあります。役員報酬は30%カット、更に悪化した場合は退職することも考えられます。この場合は30%にカットされた報酬で計算するよりもカットされる前の報酬で計算することが妥当と言えます。

このように業績が悪化した企業の場合、業績が悪化したことを証明できる決算に関する資料を持参して管轄する税務署に相談するといいでしょう。税務署に認められた場合は業績悪化前の役員報酬月額を基準にして、役員退職金の損金算入限度額の計算ができます。

(2)役員在任年数

これは、役員として登記されていた期間のことです。この年数は商業登記簿謄本をみることで分かります。

通常に最初から役員として着任をすればわかりやすいですが、

  • ①個人事業主として法人設立前から営業をしていた
  • 役員としての登記はしていないが、実質的には経営に携わっていた役員と同等である

などのケースも考えられます。

①「個人事業主として法人設立前から営業をしていた」の場合

この場合、事業主として法人設立前から営業をしていたことを証明できる資料があれば、その年数を役員在任年数に含めてよいとされています。

②「役員としての登記はしていないが、実質的には経営に携わっていた役員と同等である」場合

役員として登記せず、実質的に経営に携わっている状態のことを役員同格といいます。この役員同格の場合でも、経営に携わっていた事実が証明出来る資料があれば、役員としての在任年数に含める事が出来ます。

(3)功績倍率

これは、役職や貢献度に応じて役員退職金の額に上乗せする為の値です。法律で定められているわけではなく、各会社が独自に役員報酬金規定で決めています。会社によって倍率が異なりますが、下記にて役職別の目安となる倍率をまとめましたので、参考にしてみてください。

役職功績倍率
代表取締役3.0前後
専務取締役2.5前後
常務取締役2.0前後
取締役1.5前後
監査役1.0前後

(4)実際に役員退職金を計算してみる

実際に役員退職金を計算してみましょう。

  • 最終役員報酬:100万円
  • 役員在任年数:5年
  • 功績倍率:2.5倍
  • 役員退職金=100万円☓5年☓2.5倍=1,250万円

2、役員退職金をもらった時の税金は?税金の計算方

役員退職金をもらった時に支払う税金は 

  • 所得税
  • 住民税

2つがあります。実際どれくらい税金がかかるか例を挙げながら計算してみましょう。 

(1)試算の前提条件

①勤続履歴(役員としての勤続年数25年)

  • 19854月:入社
  • 19952月:取締役就任
  • 2020年3月:退任

②役員退職金

  • 3,000

(2)退職所得の計算方法

今回は退職なので、役員退職金の全額に対して課税するのではなく、退職所得控除を差し引いた金額が課税額となります。 

課税所得額は下記計算式にて計算することができます。

 

課税所得額=役員退職金―退職所得控除額×1/2

なお、退職所得控除額については勤続年数によって控除額が異なっており、役員としての勤務年数は25年なので、20年以上の計算が適用されます。

出典:国税庁「退職所得

なので、上記の例の当てはめると課税所得額は「3,000万―(800+70×5年)×1/2925万」となります。

この925万に対して課税されます。そして所得税と住民税をそれぞれ計算します。 

(3)所得税

出典:国税庁「退職金と税

所得税については、上記の表を用いて税率を計算します。

所得税は「925×33―153.6 =151.65」万円となります。

(4)住民税

住民税は市町村によって税率が異なる場合がありますが、ここは東京都の10%で計算します。

住民税は「925万×10%=92.5万円」となります。

(5)役員退職金全体にかかる税金は?

上記の税金をまとめると

  • 退職金支給額:30,000,000円
  • 所得税:1,516,500円
  • 住民税:925,000円
  • 退職金手取額:27,558,500円

税金としては8.2%引かれる計算となります。

3、実際に役員退職金を支払うタイミングは?

退職金の支給日について、これを定めている法律はありません。よって各会社の退職金規定を確認しておく必要がありますが、一般的には退職のタイミングで支払われるのがほとんどです。

なお、一度決めた支給日は特別な事情がない限り先延ばしすることはできません。また、退職者から支払いの請求があった場合、7日以内に支払いをしなければいけません。こちらは労働基準法により定められています。

支払いの請求期間についてですが、賃金については2年間と定められていますが、退職金については5年間となっております。これは、退職金が賃金に比べ高額で至急まで時間がかかることに加え、会社とのトラブルになりやすいためです。 

4、節税で役員退職金を利用するには?税務署に否認されないための注意点 

役員退職金を活用して節税を考えている方も多いでしょう。その理由は

  • (1)所得税・住民税が軽減される
  • (2)法人税が軽減される 

個人でも、法人でも税金の面でメリットがあるからです。

(1)所得税・住民税が軽減される

上記で書いたように、役員退職金として受け取る場合は退職所得控除を利用することができることから、所得税と住民税をおさえることができます。

(2)法人税が軽減される

役員退職金を支払うことによって、役員退職金を損金算入することができ、法人として利益がその分減るため、法人税の負担が軽減されるということになります。

これに関しては上記にも少し触れましたが、節税を目的に役員退職金を高額に計上すると税務署に否認されるケースがあります。例えば類似の企業の支給額と比べ、あまりにも金額が高すぎていた場合、損金算入できない可能性があります。妥当な金額で計上することを認識しておきましょう。

5、役員退職金を積立するには?効率よく準備する方法は?

多くの企業が活用するのが、生命保険です。生命保険にもさまざまな種類がありますが、今回は中でも退職金の準備に選ばれている長期平準定期保険を例にご紹介します。

(1)長期平準定期保険とは 

長期平準定期保険は長期的な保障を備えるための保険です。

そのため、満期時期が90~100歳までになります。そして長期間の保障になるので、解約返戻金のピークが訪れるのも遅くなります。一般的には契約後20~30年経ってピークになります。そのため、年齢が若い経営者向きの退職金準備方法となっています。

(2)メリットとデメリット

長期平準定期保険のメリットは、解約返戻率の高い期間が長く続くため、解約のタイミングに融通が利きやすいことです。

一方、デメリットとしては 

  • 長期間にわたってまとまったお金を払わなければならない
  • 早期解約の場合、大きく損をしてしまう

などが挙げられます。 

従って、長期平準定期保険は長期に渡って計画的に役員退職金として積み立てていくのであればオススメしたい保険商品です。 

(3)中小企業退職金共済(中退共)

中小企業退職金共済(中退共)は中小企業のための国の退職金制度です。 

メリットとしては

  • 掛け金の一部は国が助成してくれる
  • 掛け金を経費として計上することができる

などが挙げられます。 

ご興味がある方は下記の記事を参照にしてみてください。

中退共(中小企業退職金共済)とは?加入するメリットは?

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まとめ

役員退職金はこれまで企業に貢献してきた成果に対する報酬であり、その後の人生を豊かにしていくための貴重な資源となります。

また支払う側にも受け取る側にもそれぞれメリットがあります。そのため金額の設定や支払いに関する規定はしっかり決めて、準備する際も長期的に無理のない準備を心がけましょう。

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